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はじめに

Introduction

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)では、2021年度成果報告会「難病克服への挑戦」をオンライン開催(参加無料)します。
我が国では希少難治性疾患の克服に向けた取り組みが絶え間なく行なわれています。
この成果報告会では新たな治療法や診断法の開発を目指す最新の研究開発の進捗と成果をご報告いたします。
研究者、患者さん及びそのご家族、企業の皆様をはじめとする多くのご参加をお待ちしております。

The Japan Agency for Medical Research and Development (AMED) is set to host in online format the Fiscal 2021 Outcomes Conference titled "The Challenge to Cure Intractable Diseases" (participation is free of charge).
Continuous efforts are under way in Japan to address and cure rare and intractable diseases. This conference will present reports on the progress and outcomes of the latest research and development aiming for novel treatments and diagnoses.
We look forward to welcoming many participants including researchers, patients and their families, and company representatives.

理事長ごあいさつ

President

難治性疾患実用化研究事業
2021年度成果報告会の開催にあたり

国立研究開発法人日本医療研究開発機構 理事長

三島 良直

Ph.D.President, AMED

Yoshinao Mishima

 この度は日本医療研究開発機構(AMED) 難治性疾患実用化研究事業成果報告会にご参加いただきまして誠にありがとうございます。
2015年度のAMEDの立ち上げから8年目を迎え、2020年度から始まった第2期中長期計画の下、さらに力強い体制でより円滑な運営に努めているところです。第2期中長期計画におきましては疾患を限定しない6つのモダリティーを軸にした統合プロジェクトを定めています。難治性疾患実用化研究事業においてはそのうち、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤、疾患基礎研究の5つの統合プロジェクトを横断し基礎から実用化までの医療研究開発を途切れることなく支援しています。
 本成果報告会は2021年度に難治性疾患実用化研究事業で創出された研究成果について、患者さんやそのご家族を含め、一般の方々にも広く研究成果をご報告すると共に、研究者間で情報を共有しつつ更なる研究の推進に繋げることを目的としています。今回も昨年度に引き続きWEB形式で開催することとなりました。難治性疾患実用化研究事業で研究支援している全課題の研究成果を、オンデマンド配信にて約1ヶ月の開催期間中いつでもご覧いただけると同時に、質疑応答の場として演題毎に質問フォームを設け、演題発表を行う研究者と参加者とで質疑応答ができる環境をご提供します。併せて、「患者さんへのメッセージ」として患者さんやご家族、社会全体にどのような形で成果をお届けしたいか、研究者からの思いをご記載いただいていますので是非ご覧頂ければと考えております。また、今回は会期初日7/11に研究者ご本人に講演いただく場として、プレナリーセッションを開催いたします。2021年度中に薬事承認に至った研究開発課題や、当初の病態解明を目的とした研究からより具体的に創薬を目指す非臨床試験を目的とした研究へとステップアップした課題など、2021年度中に顕著な進展があった研究開発課題をご紹介いたします。開催後もアーカイブより視聴できますので、こちらも是非ご覧頂ければと考えております。
 AMEDは医療分野の研究開発及びその環境整備の中核的な役割を担い「医療分野の研究成果を一刻も早く実用化し、患者さんやご家族の元にお届けすること」を目指しています。その中でも希少難治性疾患はAMEDが実用化に向けた旗振り役を担う大きな意義があることを強く意識しています。
 研究者、患者さん及びそのご家族、企業の皆様をはじめとする多くの方々に本成果報告会へご参加いただき引き続きAMED難治性疾患実用化研究事業をご支援いただきますよう宜しくお願い申し上げます。

PSごあいさつ

Program Supervisor (PS)

  • 楠 進

    Susumu Kusunoki

    独立行政法人地域医療機能推進機構本部 理事
    近畿大学 名誉教授 医学部客員教授

    M.D., Ph.D., Director, Japan Community Health care Organization

     2021年12月より前任の故 葛原茂樹先生の後任として、難治性疾患実用化研究事業(以下、本事業)のプログラムスーパーバイザーを務めている楠進です。
     我が国においては、「希少性」「原因不明」「効果的な治療方法未確立」「生活面への長期にわたる支障」の4要件を満たす希少難治性疾患を対象として、難病対策が講じられており、2015年の「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号)の施行に伴い110 疾病が指定難病として難病医療費助成制度の対象となり、2021年には 338 疾病まで拡大されています。これらの難病の克服のためには、治療法開発のための基盤技術開発研究、研究基盤確立研究、医薬品開発研究等の推進が必要です。
     本事業は、希少難治性疾患を対象として、病因・病態の解明、画期的な診断・治療・予防法の開発を推進してそれらの克服を目指すものです。厚生労働省および難治性疾患政策研究事業の研究班とも相互に連携し、実用化を担うAMEDの役割として切れ目無く実臨床につなげるため、AMEDが推進する6つの統合プロジェクトの内、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤、疾患基礎研究の5つの統合プロジェクトを跨いで、研究開発を推進しています。
     2021年度中には本事業の研究開発をもとに2件の薬事承認がなされるなど、着実に成果が生まれつつあります。本成果報告会は、2021年度における研究実施内容および成果についての発表の場ですが、研究者や企業の方の情報交換の場としても活用いただき、更なる研究の発展に寄与できれば幸甚です。また、患者さんとそのご家族の皆様にも、本事業および各研究開発課題についてお伝えして、理解を深めていただければと考えております。
     これまでに引き続き、本事業では基礎研究から実用化まで一貫した医療研究開発を強力に推進し、1つでも多くの研究成果を1日も早く患者さんとそのご家族の皆様のもとにお届けできるよう努めて参ります。今後とも、本事業への皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。

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POごあいさつ

Program Officer (PO)

  • 浅井 史敏

    Fumitoshi Asai

    株式会社セプトサピエ 取締役

    Ph.D., Director, Sept.Sapie CO.,LTD

     学生時代に指導教官から与えられた骨格筋・運動神経の研究がうまくいかず、試薬しか使わない基礎研究に興味が持てないと教授に相談したところ、「折角ここまでで頑張ったのだから、もう少しねばって学位論文にまとめなさい。君には筋ジストロフィーのような疾患に関する研究テーマがよかったかもしれない。製薬会社の研究所で創薬研究をやってみてはどうか。」と諭されました。
    恩師のアドバイスに従って就職した製薬企業での創薬研究が思いのほか面白く、結局、大学に転職するまで27年間勤めました。決して平たんな道のりではありませんでしたが、いくつかの医薬品開発の成功を実体験することもできました。創薬の現場で得た2つの教訓は、(1)一人の研究者の頭の中からでてくるアイデアを医薬品として仕上げるには、企業、臨床医、患者、行政の多くの人たちの協力が欠かせない。(2)創薬の成功確率は極めて低いので、失敗要因を探すより成功確率を挙げる大胆なチャレンジが重要である。
    わが国では製薬ベンチャーが育ちにくい社会風土のためか、大手製薬企業が興味を持たない医薬品、特に難病治療薬の実用化研究は大学の研究者が主体となっています。これを「製薬企業がやらないから主体にならざるを得ない」と否定的にとらえるか、「アカデミア研究者が創薬研究の主体になれる(ノーベル賞も取れる)チャンス」と肯定的にとらえるかは、結果に大きな影響を与えるでしょう。私自身はAMED難病事業にPOとしてかかわる中で、意欲的でチャレンジ精神にあふれた数多くのアカデミア研究者と触れ合うたびに、内心、大きな手ごたえを感じています。また、筋ジストロフィーの課題にコメントを求められるたびに、学位取得を機に離れてしまった骨格筋・運動神経の研究分野に恩返しできる機会をもらったと感謝しています。

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  • 五十嵐 隆

    Takashi Igarashi

    国立成育医療研究センター 理事長

    M.D., Ph.D, President, National Center for Child Health and Development

     難治性疾患の約6割は遺伝子の異常によるとされます。最近の調査によると、ヒトの遺伝子数は26,000以上、遺伝性疾患は9,600以上、明らかにされた病因遺伝子は約6,300とされ(OMIM, 2022年4月)、いずれも毎年増加しています。この様に原因遺伝子が実に多岐にわたる難病に対して、AMEDの難治性疾患実用化研究事業では様々な治療法開発のためのアプローチが行われ、優れた成果が生み出されており、難病に苦しむ患者さんにとって大きな希望となっています。
     難病に対する様々な治療法開発の中で、現在再生医療や再生・遺伝子治療が大きく期待されています。英国や米国では現在、再生・遺伝子治療への研究開発投資額の多くが遺伝子治療に向けられています。遺伝性疾患やがんの治療に遺伝子治療が有効であるとの考え方を反映した結果と思われます。既にその成果が現われ始めており、様々な遺伝子治療製品が英国・米国を中心に実用化され、わが国にも導入されています。わが国では遺伝子治療に関係する基礎・臨床の研究者が少ないこと、ウイルスベクターの改良、新規導入技術の開発、ベクター大量製造技術、ゲノム編集技術、安全性などの面で課題が残されており、これらの課題を解決するための支援体制も不十分な状況にあります。
     AMEDの本事業を通じて難治性疾患全般に関する研究が大きく進展することを願うと共に、AMEDと関係省庁との連携が更に図られ、再生医療だけでなく遺伝子治療に関する基礎・臨床面での研究も進展することを願っています。

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  • 池田 貞勝

    Sadakatsu Ikeda

    東京医科歯科大学病院 がん先端治療部 准教授

    M.D., Ph.D, Associate Professor, Medical Hospital Central Clinical Facilities, Tokyo Medical and Dental University

     最近の医療の進歩はめざましく、難病分野においても画期的な遺伝子治療が実用化されたり、細胞治療やAIを用いての最新の研究開発が行われています。AMEDでは難病克服に向けて、基礎的な病態解明から、シーズの発見、医薬品や医療機器開発までの一気通貫で支援しています。最先端の研究開発を推進し、一人でも多くの難病患者さんが恩恵を受けられるよう、皆さんと一緒に邁進をしてゆきたいと思います。

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  • 石井 健

    Ken Ishii

    東京大学医科学研究所ワクチン科学分野 教授

    M.D., Ph.D., Professor, Division of Vaccine Science, Department of Microbiology and Immunology, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo

     猖獗を極めている新型コロナウイルスのパンデミックの渦中において、難治性疾 患実用化研究事業で採択された皆様には多々のご苦労が重なっていることと存じます。そのような厳しい状況のなかで事業の成果を発表されること自体がどのような意義があるのか、賛否両意見があるかとは思います。一方で、難病患者や御家族の思いを察すれば、AMED開設以来の悲願である、未だ治療法の確立していない難病の克服のため、治療法開発のための基盤技術開発研究、研究基盤確立研究、医薬品開発研究等の推進を先送りすることも許されません。皆様の発表を介して研究者間の議論が進み、励みになることを期待し、また皆様のたゆまぬ努力と熱意に敬意を表するとともに今後の研究のますますの発展を祈願いたします。

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  • 稲垣 治

    Osamu Inagaki

    (元)日本製薬工業協会医薬品評価委員会 運営委員会幹事

    Ph.D., Former, Drug Evaluation Committee, The Japan Pharmaceutical Manufacturers Association

     医療イノベーション推進を目的として技術的な観点を軸にモダリティ別に組織が編成されている第二期AMEDの中で、「難治性疾患実用化研究事業」は疾患の観点から、これまで適切な治療法がなかったり治療選択肢の乏しかった難治性疾患の患者さんに技術横断的に新たな医療の提供を目指す事業と位置付けられます。ここの事業では、疾患研究の成果より生まれた新規治療法のアイディアを薬事承認を経て新たな治療法に昇華すべく、実用化に向けた橋渡し研究が進められています。疾患の新規治療に関する多くの先生方のアイディアがより早く社会実装され患者さんに届けられるようプログラムオフィサーとして事業推進のお役に立てればうれしく思っております。

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  • 島田 隆

    Takashi Shimada

    日本医科大学 名誉教授

    M.D., Ph.D, Professor Emeritus, Nippon Medical School

     遺伝子治療は副作用の問題でしばらく停滞していましたが、最近では多くの難治性疾患の治療で有効性が明らかになっています。欧米では再生細胞治療をしのぐ次世代の医療技術として開発が進められていて、既に、複数の遺伝子治療用製品が大手製薬企業から超高額な医薬品として販売されています。残念ながら様々な理由で日本の遺伝子治療研究は遅れています。これまでは、遺伝子治療の研究者も、研究費も、企業の数も限られていました。日本では臨床用ウイルスベクターが作れないため、治療効果が期待できる疾患の遺伝子治療が行えませんでした。このような状況を打破し、日本の遺伝子治療研究を活性化するためにAMEDではアカデミアや企業と協力して新しい取り組みを開始しています。
     欧米の遺伝子治療に追いつき、追い越すためには基礎研究から医薬品としての開発までの連続した支援が必要です。基盤技術開発事業ではウイルスベクターの製造技術開発や製造施設の整備、大型動物実験施設の整備等を進めています。難治性疾患実用化事業や革新的がん医療実用化事業では、具体的な疾患を対象にした遺伝子治療研究を支援しています。これからは採択件数を更に増やし、若手研究者の参加を促すこと。各事業に分散する遺伝子治療研究者を結集して実用化に向けた情報共有を進めること。日本が先行する再生医療研究分野とも連携して日本独自の遺伝子治療を開発すること等が重要だと考えています。又、臨床開発を進めるうえで不可欠な臨床用ベクターの供給体制についても産官学共同で早急に整備する必要があります。これらの支援活動と研究者の努力により遺伝子治療研究が進み、日本でも多くの疾患の遺伝子治療が実施できるようになることを期待しています。

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  • 成川 衛

    Mamoru Narukawa

    北里大学大学院薬学研究科 医薬開発学 教授

    Ph.D., Professor, Graduate School of Pharmaceutical Sciences Department of Clinical Medicine (Pharmaceutical medicine), Kitasato University

     皆さま、初めまして。当事業のプログラムオフィサーを務めています成川衛です。
     難病に対する新たな治療法について、その効果と安全性を確かめ、医薬品や医療機器等として医療の場に提供することの是非を判断するための拠り所となるのが臨床試験のデータです。臨床試験は、研究者や企業関係者の日々のご努力と、多くの患者の方々のご協力の上に成り立つものです。また、試験が適正に実施されるために設けられている種々の規制が存在します。
     世の中の多くの難病については、未だ満足のいく治療手段が存在しない一方、難病は一般に患者数が少なく、新たな治療法の効果や安全性のエビデンスを示しにくいという特徴があります。私は、臨床試験のデザイン・方法論や得られたデータの解析・評価、薬事や臨床試験に関する規制を専門としています。このような知識・経験を生かしながら、難病を対象とした医療分野の実用化研究が円滑かつ効率的に進み、得られた研究成果をできるだけ早く多くの方々に利用可能とできるよう、難病研究の支援に力を注いでいきたいと考えています。

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  • 西澤 正豊

    Masatoyo Nishizawa

    学校法人新潟総合学園新潟医療福祉大学 学長

    M.D., Ph.D., President, Niigata University of Health and Welfare

     「難病」の概念は、その定義によって変わりますが、原因不明で、治療法が確立されていない疾患であることに、希少であることが追加されて現在に至ります。医学の進歩によって、治療法が対症療法としてでも開発され、「難病」ではなくなる疾患もある一方で、容赦なく進行性であり、進行を抑制することも依然としてできないままの「難病」も、いまだ多数残されています。
     「難病」研究は、研究費が配分され、研究者が増えて、活発にならなければ、なかなか進みません。自然科学研究は、研究者が自発的に関心・興味を持つことから始まりますが、AMEDが支援する皆さんの病態研究は、その先に「難病」患者さんの治療法の開発に貢献するという明確なゴールが設定されているのです。このことを常に意識して研究を進めていただきたいと思います。今年度の成果発表会におきましても、皆さんの研究によって、新たに「難病」の克服に繋がる成果が発表されることを大いに期待しております。

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  • 渡邉 裕司

    Hiroshi Watanabe

    浜松医科大学 理事・副学長

    M.D., Ph.D., Executive Director and Vice President, Hamamatsu University School of Medicine

     臨床薬理学および循環器内科の立場で難治性疾患実用化研究事業の発足時からPOとして参加させていただいています。難治性疾患の医薬品開発に関して、私自身も今から20年以上前、当時は勃起不全治療薬として承認されたPDE5阻害薬の肺動脈性肺高血圧症へのドラッグリポジショニングを試みたことが有ります。肺血行動態や自覚症状に著明な効果が認められ、米国心臓病学会では肺動脈性肺高血圧症へのPDE5阻害薬の応用の先駆けの発表となりました。しかし、当時日本では医師主導治験の制度がなく、適応拡大のため製薬企業にいくら治験の開始をお願いしても聞き届けられませんでした。今振り返ると、製薬企業は市場性が小さいことを危惧したかもしれませんし、また外資系企業であったために日本単独での治験開始は困難だったかもしれません。またこちらが提示したエビデンスもRCTではなく症例報告のレベルにとどまり、企業を動かすほどのエビデンスレベルではなかったからかもしれません。ただし、学会発表などで興味を持って下さった多施設の研究者の方々が同一プロトコールで臨床試験を実施してくれたおかげで、これらの国内データをもとに公知申請に基づき遅まきながら上記のPDE5阻害薬は承認されました。現在では肺動脈性肺高血圧症治療の第一選択肢になっています。頑健なエビデンスをRCTにより提示することは重要ですが、希少性疾患の場合、RCTの完遂はしばしば困難です。症例報告レベルであっても、通常は進行性に症状が増悪する難治性希少疾患に対し、ある医薬品によって客観的に症状や検査データが改善したならば、その観察は優れたエビデンスになりうると思っています。幸い現在は医師主導の治験が可能です。客観性や信頼性の高い評価項目を設定して、バイアスを最小化することで、少数のサンプルサイズで効率的に優れたエビデンスが日本から創出されることを期待しています。

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  • 和田 和子

    Kazuko Wada

    大阪府立病院機構大阪母子医療センター 新生児科主任部長

    M.D., Manager, Department of Neonatal Medicine, Osaka women's and children's hospital

    新型コロナウイルス感染症により、世界中の人々の命、健康と生活が影響を受けました。しかし、人類はワクチンや治療薬の開発、製造そして流通によって、このパンデミックの克服に近づいています。このことは、知見と経験の蓄積があれば、危機に直面しても人々の努力によってどのような困難も乗り越えられることを証明しています。研究者の皆様も、コロナ禍において様々な困難に直面されたことでしょう。しかし、このような状況であるからこそ、怯まずしっかりと研究を推進させていかなければなりません。なぜなら大きな災害やパンデミックは、社会的な弱者により多くの負荷がかかるからです。難病の患者さまの中には、期待されていた治療の延期や、リハビリの中断などでご不安な日々が続いているかもしれません。研究者は、今こそ、病に苦しむ人たちのために、これまでの知見を最大限に活かし、新たな知見を求め、新たな医療の開発に向けて頑張る時だと思います。新しい生活様式として、Webを駆使してコミュニケーションを図ることが定着してきました。従来の学会形式での討論が困難な状況ですが、今回の成果報告会は、新しい形式を通して、情報交換を図り、相互に高め合いましょう。このような形式であっても、多くの実りがあることを証明しましょう。

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開催概要

Outline

名  称難治性疾患実用化研究事業 2021年度成果報告会
開催期間(開催全期間)2022年7月11日(月)~8月10日(水)
(ライブイベント)2022年7月11日(月)午後
会  場オンライン(Web)開催
参加費用無料
主  催国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
参加方法専用の参加登録フォームより、メールアドレス、ご希望パスワードを登録いただき、7月11日(月)以降、本サイトの「ログインボタン」、または事前にご登録いただいたメールにお送りするURLより特設サイトにアクセスいただけます。

ログインには、メールアドレスとご登録されたパスワードが必要となります。パスワードはお忘れにならないよう、ご注意ください。

推奨環境パソコン・タブレット・スマートフォン(最新のOS/ブラウザバージョンでの参加を推奨いたします)

通信料は参加者のご負担となります。

ConferencePractical Research Project for Rare/Intractable Diseases Fiscal 2021 Outcomes Conference
PeriodJuly 11- August 10, 2022
(Live)Afternoon on July 11, 2022
VenueOnline event
FeeFree
OrganizerJapan Agency for Medical Research and Development
Way to participatePlease register your e-mail address and desired password from the dedicated participation registration form, and after July 11th (Monday), go to the special site from the "login button" of this site or the URL sent to the e-mail registered in advance. You can access it.

Recommended operating requirementsPC,Tablet,MobilePhone(Latest OS / browser version is recommended)

プログラム

Program

難治性疾患実用化研究事業2021年度成果報告会

プレナリーセッションプログラム

プレナリーセッション当日の定員は500名(先着順)とさせていただきます。当日、参加人数が定員を超えた場合はアクセスすることができなくなります。
誠に申し訳ございませんが、ご参加できなかった場合は、後日掲載予定のアーカイブより、当日の講演をご覧いただきますようお願いいたします。

日時:7月11日(月曜日)

13:00〜13:15

開催挨拶ならびに事業紹介

楠 進(難治性疾患実用化研究事業プログラムスーパーバイザー)
13:15〜15:35

研究代表者講演(35分×4名)

天谷 雅行(慶應義塾大学医学部 教授)
「難治性疾患・天疱瘡に対する治療戦略」
横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院 教授)
「家族性LCAT欠損症を対象としたLCAT-GMAC治療実用化に向けた医師主導治験」
水澤 英洋(国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐・名誉理事長)
「未診断疾患イニシャチブIRUDーその成果と展望ー」
林 久允(東京大学大学院薬学系研究科 准教授)
「小児期発症の胆汁うっ滞性肝疾患を対象とした創薬研究」
15:35〜15:50

科学技術振興機構(JST)事業からのシーズ紹介
「日本発の基盤科学技術紹介ー医療研究開発への橋渡しを目指してー」

川本 篤彦(神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター センター長・本事業統括)
久永 幸博(科学技術振興機構 戦略研究推進部 研究評価グループ 調査役)
15:50〜

閉会挨拶

楠 進(難治性疾患実用化研究事業プログラムスーパーバイザー)

※敬称略。
プログラムは当日までに変更される可能性がございます。

Fiscal 2021 Outcomes Conference on the Practical Research Project for Rare/Intractable Diseases

Plenary Session Program

Date and times: Monday, July 11

13:00〜13:15

Opening address and introduction to the program

Susumu Kusunoki, Program Supervisor, Practical Research Project for Rare/Intractable Diseases
13:15〜15:35

Lectures by principal researchers (35 minutes x 4 researchers)

Masayuki Amagai, Professor, School of Medicine, Keio University
Koutaro Yokote, Professor, Graduate School of Medicine, Chiba University
Hidehiro Mizusawa, Special Advisor to President / President Emeritus, National Center of Neurology and Psychiatry
Hisamitsu Hayashi, Associate Professor, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, The University of Tokyo
15:35〜15:50

Introduction to seeds from the Japan Science and Technology Agency (JST) programs
"Introduction to Basic Science and Technology from Japan?Aiming to Be a Bridge to Medical Research and Development"

Atsuhiko Kawamoto,Director, Translational Research Center for Medical Innovation, Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe
Yukihiro Hisanaga, Department of Strategic Basic Research, Japan Science and Technology Agency
15:50〜

Closing address

Susumu Kusunoki,Program Supervisor, Practical Research Project for Rare/Intractable Diseases

* Honorifics omitted.
The program is subject to change until the day before the session.

参加登録

Registration

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事業紹介

About AMED

難治性疾患実用化研究事業は、「希少性」「原因不明」「効果的な治療方法未確立」「生活面への長期にわたる支障」の4要件を満たす希少難治性疾患を対象として、病因・病態の解明、画期的な診断・治療・予防法の開発を推進することで、希少難治性疾患の克服を目指すものです。


2022年度現在、主に以下の研究分野の研究開発課題が進行中です(括弧内は該当するAMEDにおける統合プロジェクト)。

  • 希少難治性疾患に対する画期的な医薬品の実用化に関する研究(医薬品プロジェクト)
  • 希少難治性疾患に対する画期的な医療機器等の実用化に関する研究(医療機器・ヘルスケアプロジェクト)
  • 希少難治性疾患に対する画期的な再生・細胞医療・遺伝子治療の実用化に関する研究(再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト)
  • 診療に直結するエビデンス創出研究(ゲノム・データ基盤プロジェクト)
  • 希少難治性疾患に関する全ゲノム医療の推進等に資する研究(ゲノム・データ基盤プロジェクト)
  • 難病ゲノムデータ基盤構築にむけた先行的な全ゲノム等解析研究(ゲノム・データ基盤プロジェクト)
  • 希少未診断疾患に対する診断プログラムの開発に関する研究(ゲノム・データ基盤プロジェクト)
  • 希少難治性疾患の研究及び医療の発展に資する情報基盤構築研究(難病プラットフォーム)(ゲノム・データ基盤プロジェクト)
  • 希少難治性疾患のELSIに関する研究分野(ゲノム・データ基盤プロジェクト)
  • 希少難治性疾患の克服に結びつく病態解明研究(疾患基礎研究プロジェクト)
  • 未診断疾患イニシアチブの成果を発展させる研究(IRUD Beyond)(疾患基礎研究プロジェクト)

事業の詳細は、AMED難治性疾患実用化研究事業ウェブサイトよりご覧ください。

The Practical Research Project for Rare/Intractable Diseases aims for cures for rare/intractable diseases by promoting the elucidation of the causes and conditions, and the development of groundbreaking methods of diagnosis, treatment, and prevention of rare/intractable diseases that fulfill the four criteria of rarity, unknown etiology, lack of effective treatment, and source of long-term difficulty in daily living.


As of fiscal 2022, research and development (R&D) projects are underway primarily in the following fields (parentheses indicate the applicable integrated project at AMED).

  • Research in the practical application of groundbreaking drugs targeting rare/intractable diseases (Project for Advanced Drug Discovery and Development)
  • Research in the practical application of groundbreaking medical devices targeting rare/intractable diseases (Project for Medical Device and Healthcare)
  • Research in the practical application of groundbreaking regenerative / cellular medicine and gene therapies targeting rare/intractable diseases (Project for Regenerative / Cellular Medicine and Gene Therapies)
  • Research in the generation of evidence linked directly to medical care (Project for Genome and Health Related Data)
  • Research that contributes to the promotion of whole genome medicine related to rare/intractable diseases (Project for Genome and Health Related Data)
  • Research in advanced whole genome analysis toward building a genome database of intractable diseases (Project for Genome and Health Related Data)
  • Research in the development of a diagnostic program targeting rare and undiagnosed diseases (Project for Genome and Health Related Data)
  • Research in building a database that contributes to the development of research and medicine for rare/intractable diseases (Rare Disease Data Registry of Japan) (Project for Genome and Health Related Data)
  • Research fields related to the ethical, legal, and social issues (ELSI) of rare/intractable diseases (Project for Genome and Health Related Data)
  • Research for the elucidation of conditions that link to cures for rare/intractable diseases (Project for Basic Medical Research)
  • Research in developing the outcomes of undiagnosed disease initiatives (IRUD Beyond) (Project for Basic Medical Research)

For details on the program, please visit the Practical Research Project for Rare/Intractable Diseases section of the AMED website.